非破壊検査では、テラヘルツ波を用いた検査が行われることがあります。ここでは、そもそもテラヘルツ波とは何か、テラヘルツ波を用いた非破壊検査はどのような仕組みなのかなどについて解説します。
テラヘルツ波を用いた非破壊検査のメリットやデメリットも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
テラヘルツ波とは、周波数1テラヘルツ前後の波長を持つ電波のことをいいます。
電波と光の中間領域にあたる波長の長さを持っているのが特徴です。そのため、テラヘルツ波は光と電波の特徴を併せ持っています。
紙や木材、布、プラスチックといった物質は透過する特性を持っており、同様に透過性の性質を持っているX線と比較すると透過性が低い電波です。
このことから、プラスチック部品のようにX線を用いた検査では構造の観測が難しいものに対し、テラヘルツ波を用いた検査が選択されることがあります。
一方、金属に対しては非透過性を持つのが特徴です。テラヘルツ波ならではの特徴を活かし、様々な分野での使用に関する研究が進められています。
テラヘルツ波を用いた非破壊検査で選択されることが多いのが「パルスエコー法」と呼ばれるものです。テラヘルツ帯のパルス波を測定対象に入射することによって発生する反射波と透過波のエコー波形を計上すれば3次元情報が入手可能になります。
入射されたパルス波は材質の屈折率の違いによって反射の遅れが発生することになるので、これを内部情報として取得すれば内部構造の情報が分かる形です。
テラヘルツ波を用いた非破壊検査には、メリットもあれば気をつけておきたいデメリットもあります。それぞれおさえておきたいポイントを解説します。
テラヘルツ波ならではの特性を活かした検査が行えるのがメリットです。テラヘルツ波は、非電離放射線でありながら紙や布などに透過性を持っていることから、その他の方法では検査が難しいものに対応できることがあります。
テラヘルツ波は、電波と光の特徴・性質を兼ね備えているのが強みです。電波であるテラヘルツ波は周波数分解能が高いことから遠くまで届く特徴を持ちます。
また、光は直進性に優れているのが特徴です。そのため、テラヘルツ波は光と同様に直進しながら電波のように紙や布などを透過して検査が行えます。
X線の場合は金属を透過させにくいことから金属の混入異物の識別には適していますが、樹脂中の樹脂異物といったものは苦手です。テラヘルツ波であれば同種混入異物の識別にも活用できます。
デメリットとしておさえておきたいのが、テラヘルツ波専用の設備を導入して検査を行わなければならないことです。また、一般的な工業用設備と比較すると、それほど数が多いとはいえず、選択肢も少ないのがデメリットです。
どのような装置を導入するかについてはよく検討しなければなりません。