傾斜CTと直交CTの違いとは

CTスキャン装置の撮影方法として、傾斜CT、直交CTといったものがあります。産業用CTを導入しようと考えているのであれば、傾斜CTと直交CTのどちらに対応したCTなのかよく確認しておくことが重要です。
それぞれの特徴やメリット、違いについて解説します。

傾斜CTのメリット

傾斜CTとは、斜め方向からでも撮影が可能なCT装置のことをいいます。
従来の直交CTでは断層像の観察は行いやすかったものの、平面情報を取得するのであれば傾斜CTの方が適しています。

直交CTの場合、直交CTで撮影可能な状態にするためにワークを切断・加工しなければならないことがありました。ですが、傾斜CTであれば直交CTでは難しいものでも非破壊検査が可能です。
破壊することなく断層撮影が可能であることから、非破壊を重視する場合は傾斜CTが向いています。

また、直交CTと比較して立体感のある画像撮影が可能なのもメリットです。細かい異常などにも気づきやすくなります。また、直交CTでは大きい試料の撮影が行えないことがありますが、傾斜CTであれば対応できる範囲が広いです。

直交CTのメリット

直交CTとは従来のCT手法であり、水平にX線源・カメラを設置し、ワークを横から投下した画像を元に撮影する形です。X線源とX線カメラの間に撮影する対象を置き、X線の照射方向に対して直交する軸を中心に回転させながら撮影を行います。

特に、ワークの形状が円筒形や球形の場合に活用されます。傾斜CTと比較して分解能が高い特徴を持っています。また、鮮明な画像取得が可能なのもメリットといえるでしょう。
画像の鮮明さを重視する場合に向いています。

傾斜CTと直交CTの違い

傾斜CTと直交CTには、様々な違いがあります。例えば、大きなワークを撮影するのには傾斜CTの方が適しています。

また、傾斜CTは直交CTと比較して観察試料をX線源により近づけることが可能であるため、傾斜CTの方が高い拡大率で観察可能なのも違いです。
一方、直交CTの場合は試料をX線源から試料の回転半径以上離さなければなりません。直交CTはワークの幅に影響されてしまいますが、傾斜CTの場合はそういったことがないのも違いです。板状のワークを撮影するのに直交CTは向いていません。

ただ、傾斜CTのほうが優れているといったわけではなく、それぞれ得意としている部分が異なります。
縦断面画像をより鮮明に撮影したいと考えた場合、向いているのは直交CTです。これは、傾斜CTが斜め方向から撮影した画像を用いて画像再構成を行うことによって縦断面画像にその影響が出てしまうことが関係しています。
ノイズが多く入ってしまうこともあるので、鮮明な撮影を目的としている場合は向いていないことが多いです。

一方で、直交CTの場合はX線の照射方向に対し直交する形で撮影を行うため、縦断面画像が鮮明です。このような違いがあることから、撮影するワークに合わせる形で適したものを選ぶのが理想といえるでしょう。

一台で傾斜CTと直交CTの両方に対応しているマシンもあります。