非破壊検査は、物体を透過するX線を被写体に投射して撮影して検査する手法です。そして、X線を使用した検査には、X線スキャンとCTスキャンがあります。ここでは、X線とCTとの違いを分かりやすく説明していきます。
CTスキャンを理解するには、まずレントゲン撮影(X線撮影)のしくみを知ることが必要です。
レントゲン撮影では、被写体に物体を透過するX線を照射します。X線は、被写体の素材や内部の構造によって、透過力が弱まるため、その減弱の差をフィルムや検出器を使用して、被写体の内部を検査することができます。
例えば、医療用のレントゲン撮影の場合、X線が透過しづらい骨や歯は白っぽく、皮膚や筋肉は黒っぽく映し出されます。ただし、レントゲンは、対象物の構造をコントラストの差によって捉えることはできますが、二次元データで、奥行きのある画像ではないために、立体的な構造を知ることは出来ません。
CTスキャンは、360度すべての方向からX線を照射することでX線透過像をデジタルデータとして取得し、そのデータをコンピューター処理することで構造物の三次元情報を得ることができます。
レントゲンで撮影された画像では分からなかった被写体の立体的な構造を把握することによって、より精度の高い検査が可能になります。
医療用CTの場合、生体を撮影するため、被ばく線量を抑えることが重要になります。被写体のぶれを避けるため、ベッドに垂直に立てられたX線管と検出器などの検査機器が、被写体である人の体に沿って回転します。そして、高い線量を用いて、短時間で撮影を行います。
一方で産業用CTの場合、X線管と検出器は固定されており、被写体である工業製品を設置した台が回転して撮影を行います。工業用製品を撮影するため被ばく線量を気にする必要がないため、低い線量で長時間にわたって撮影を行います。
産業用CTでは高精度・高ノイズのデータを得ることができ、品質検査や製品開発などのさまざまな用途で使われています。