電子基板のCT検査とは?

電子基板のCT検査とは、産業用X線CTで基板の内部を3D断面として可視化する非破壊検査です。はんだ接合部のボイドやクラック、多層基板の内部配線やビアの状態まで、基板を切断せずに確認できます。ここではCT検査で具体的に何が見えるのかを解説します。

電子基板における産業用CT検査の仕組み

電子基板のCT検査は、基板をあらゆる方向から撮影した投影データを再構成し、内部を3D断面として観察する手法です。任意の高さ・角度で断面を切り出せるため、部品の下に隠れて直視できないはんだ接合部や、積層された内層のパターンまで追跡できます。

2D X線透視(一方向からの透過画像)は、短時間で広い範囲を確認できる一方、厚み方向の情報が重なって1枚の画像に投影されます。上下面の部品や複数の層が重なると、どの高さで異常が起きているのかを切り分けられません。CTは厚み方向を分離して断面として確認できる点が、電子基板の内部検査で有効に働く理由です。実装基板を上面から下面まで100〜300層の水平断面として出力できる装置もあり、上下面を分離したうえでボイド率を測定する使い方も紹介されています(2026年8月時点の記載)。

CTとX線の違い
について詳しく見る

はんだ接合部でCT検査に見えるもの

はんだ接合部は、CT検査の効果が分かりやすく現れる箇所です。BGA(Ball Grid Array/パッケージ裏面に格子状にはんだボールを配置した部品)のように接合部を直視できない実装形態で確認できる不良を、種類ごとに見ていきます。

ボイド(はんだ内部の空洞)

ボイドは、リフロー時のフラックスのガス化などによってはんだ内部に閉じ込められた空洞です。はんだと空気ではX線の吸収量が大きく異なるため、CTでは空洞の位置と体積を3Dで捉え、接合部に対するボイド率として定量評価できます。

ボイドは熱伝導性と機械的強度を損なう要因とされ、許容範囲の考え方は規格に基づいて運用されるのが一般的です。BGA向けの規格であるIPC-7095を解説した資料では、クラス2(専用サービス機器)・クラス3(高信頼性機器)において累積ボイド面積が25%未満であることが許容の目安として紹介されています(2026年8月時点の記載)。2D X線でも面積比の把握はできますが、CTでは高さ方向の分布まで含めて評価できる点が異なります。

クラック(熱疲労による割れ)

クラックは、温度サイクル下で基板と部品の熱膨張差によって応力が繰り返しかかり、はんだ接合部に生じる割れです。ボールの外周や界面から進行することが多く、2D X線透視では投影方向によって周囲のはんだと重なり、見逃しやすい不良として知られます。

CTでは接合部を任意の断面で切り出せるため、割れがどの高さで、どの範囲まで進んでいるかを内部から特定できます。信頼性試験後の抜き取り解析で、規定サイクル数に対する劣化の進み方を確認する用途にも用いられます。浜松ホトニクスの解説では、産業用CTは断線箇所や部品クラックの特定に有効な手法として紹介されています(2026年8月時点の記載)。

ブリッジ(隣接ボール間のショート)

ブリッジは、隣接するはんだボールがつながって短絡する不良です。CTでは上下面や層を分離して断面を確認できるため、裏面の部品像に隠れて判別しにくいブリッジや、狭ピッチ部品の微細なつながりも位置を特定して検出できます。

HIP(ヘッド・イン・ピロー)

HIP(ヘッド・イン・ピロー)は、はんだボールとパッド側のはんだが接触しているように見えて、実際には融合していない不良です。「はんだ枕」とも呼ばれ、部品の反りやパッド表面仕上げの不具合などが原因となります。

電気的には導通しているように見えることがあり、外観検査や2D X線透視では正常な接合と識別しにくい代表的な不良です。CTでは界面に残った未融合の境界を断面として捉えられるため、接合しているように見えて接合していない状態を判別できます。BGA以外にも、LGAやQFNのように接合部を直視できない部品や両面実装基板の検査に用いられています。

内部配線・多層基板でCT検査に見えるもの

多層基板の内部配線・ビア

多層PCB(複数の配線層を積層したプリント基板)では、層をつなぐビア(層間接続用の穴)や内層パターンが表面から見えません。CTでは各層を断面として切り出せるため、内層パターンの断線、ビアのめっき充填不良、層間剥離(デラミネーション)といった異常を非破壊で確認できます。

従来は断面研磨によって切断・観察する必要があり、狙った位置を外すとサンプルを作り直す手間が生じました。CTは同じサンプルを残したまま任意断面を繰り返し確認できるため、故障箇所が特定できていない解析段階でも使いやすい手法です。同社の解説では、多層基板内部の異常層の特定に有効と紹介されています(2026年8月時点の記載)。

BGAパッケージ・半導体チップの内部

CT検査の対象は基板上の接合部だけではありません。BGAパッケージや半導体チップ内部のワイヤーボンディング(チップと基板をつなぐ細線)の状態や、ダイアタッチ(チップの接合層)の空隙・剥離も観察対象になります。ユーロフィンFQL株式会社の設備紹介では、ICパッケージ内部のボンディング剥離を非破壊で確認できると記載されており、リード部の接続信頼性の確認にも用いられます(2026年8月時点の記載)。

QFNのようなリードレスパッケージでは、接合部がパッケージ底面に隠れており、外観検査では状態を判断できません。直視できない接合部を断面で確認できるCTが有効に働く典型的な対象です。

電子基板のCT検査と2D X線・AOI検査との違い

CT検査は、既存の検査手法を置き換えるものではなく、確認できる範囲が異なる手法です。それぞれの役割を整理します。

▼スマホは横スクロールでご確認ください▼
検査手法 主に確認できる範囲 向いている場面
AOI(外観自動検査) 表面から見える実装状態(部品の有無・位置ずれ・極性・フィレット形状) 量産ラインでの全数検査
2D X線透視 透過画像として重なった内部の状態(ボイドの面積比・ブリッジ・部品の欠品) 短時間での内部スクリーニング
CT検査 3D断面としての内部構造(高さ方向を分離した接合部・内層・ビア) 不良解析・信頼性評価・工程条件の検証

AOIは表面から見える実装状態を高速に判定し、2D X線は内部を短時間でスクリーニングします。これに対してCT検査は速度よりも深さを優先する場面に向く手法です。ラインでの全数検査はAOIや2D X線に任せ、原因が特定できない不良の解析や、工程条件を詰める段階の内部確認をCTが担う運用が現実的です。

産業用CTのインラインと
オフラインの違い
について詳しく見る

SUMMARYまとめ
電子基板のCT検査を理解したら、次は装置選びへ

電子基板のCT検査で見えるものを理解できたなら、次のステップは対象物に合った産業用CT装置を選ぶことです。はんだ接合部のボイドやHIPを捉える分解能が必要なのか、多層基板の内層まで追える運用が必要なのかで、求められるスペックは変わります。

当メディアでは、撮影対象物や検査目的に合わせて独自の視点で産業用CTメーカーを調査・ピックアップしています。はんだ接合部や多層基板の確認に対応した装置を比較ガイドで確認できるため、導入の検討材料として合わせてご確認ください。

撮影対象物から探す
産業用CT3選
アルミなどの軽金属や
プラスチック成形品など
低密度で透過しやすいなら
NAOMi-CTシリーズ
アールエフ
NAOMi-CTシリーズ
画像引用元:アールエフ公式HP
(https://rfsystemlab.com/product/industry/ct/280_380ct.html)
NAOMi-CT
Mサイズのスペック※2
最大管電圧 100kV
撮影サイズ※1 Φ151×H63~82mm
耐荷量 約10kg
本体サイズ 623×310×300mm
おすすめの理由
卓上サイズでその場で撮影可能
低価格で導入しやすいモデル
  • 卓上サイズ・シンプルな設計により308万円(税込/Mサイズ)と導入しやすい価格。工事をせずに研究室や事務所に設置できる。
  • 簡単な操作でその場で撮影・確認が可能。100kVの管電圧によりアルミ・プラスチック製の商品開発や考古学研究に活躍。
マルチマテリアルや
複雑形状部品など
部分ごとに厚みや材質が異なるなら
ZEISS METROTOMシリーズ
カールツァイス
ZEISS METROTOMシリーズ
画像引用元:カールツァイス公式HP
(https://www.zeiss.co.jp/metrology/systems/x-ray/3d-x-ray/metrotom-800-320-kv.html)
ZEISS METROTOM
1500 225kVのスペック
最大管電圧 225kV
撮影サイズ※1 Φ615×H800mm
耐荷量 50kg
本体サイズ 3700×1810×2440mm
おすすめの理由
測定に特化した設計で
精密なCTスキャンができる
  • 測定室・品質管理室での運用を想定。密度が高めの異材質混在部品や精密部品の品質保証に特化。
  • 三次元測定やCADとの連携により、寸法・形状・幾何公差を測定が可能で、不具合の特定や開発期間の短縮につながる。
厚物金属や
溶接構造部品など
高密度で透過しにくいなら
UXシリーズ
コメットテクノロジーズ・ジャパン
UXシリーズ
画像引用元:コメットテクノロジーズ・ジャパン公式HP
(https://yxlon.comet.tech/ja/products-ja/ux50)
UX50のスペック
最大管電圧 450kV
撮影サイズ※1 Φ600×H800mm
耐荷量 100kg
本体サイズ 2250×1770×2350mm
おすすめの理由
高出力・撮影可能範囲が広く
大型・高密度のワーク撮影に強い
  • 工場内や検査エリアで扱われる大型・高密度な鋳物部品や厚肉構造物に対し、高電圧による高い透過力で内部撮影が可能。
  • 広い視野で大型のワークでも全体を一度に把握することができ、欠陥の位置関係の把握や厚肉・高密度部の状態確認に対応。

電話番号は公式サイトに記載がありません

※1:撮影サイズについては、NAOMi-CT・UX50は「最大スキャンサイズ」、ZEISS METROTOMは「精度保証条件下での測定範囲」を掲載しています。
※数値はいずれも撮影・測定条件により変動しますので、詳しくは各社にお問い合わせください。
※2:NAOMi-CTは、Mサイズ、Lサイズ、スライドLの3種類があります。