樹脂・プラスチックのCT検査とは?

樹脂・プラスチックのCT検査とは、産業用X線CTを用いて成形品の内部を3D画像として可視化する非破壊検査です。樹脂は密度が低くX線が透過しやすいため、切断せずに内部のボイドやクラックを確認できます。ここでは検査の仕組みと、実際に何が見えるのかを解説します。

樹脂・プラスチックにおける産業用CT検査の仕組み

産業用CT検査は、対象物を壊さずに内部構造を3D画像として取得できる非破壊検査です。対象物を回転させながらあらゆる方向からX線を照射し、透過量の差として得られた投影データをコンピュータで再構成することで、内部の断面画像と立体データを生成します。

再構成の手がかりになるのは素材ごとのX線の吸収量の差です。異なる材料で構成された製品はもちろん、同じ樹脂であっても密度に違いがあれば差として捉えられるため、成形品の内部に空気が入り込んだ箇所や充填が不十分な箇所を切断せずに把握できます。

樹脂・プラスチック製品にCT検査が適している理由

樹脂・プラスチックは鉄やステンレスなどの金属に比べて密度が低く、X線が透過しやすい素材です。透過に必要なエネルギーが小さくて済むため、比較的低い管電圧でも内部まで届き、コントラストのついた鮮明な画像を得やすい点が特徴です。

管電圧(X線の透過力を決める電圧)の目安として、樹脂・プラスチック製品や電子基板を対象とする卓上型の装置では、50〜100kVの範囲を採用している製品があります(2026年8月時点の公式仕様)。一方で鉄や銅などの重金属は透過しにくく、同じ装置では対応が難しい場合があるため、対象素材に応じた管電圧帯の装置選びが必要です。

管電圧の透過厚さの目安
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樹脂・プラスチックのCT検査で分かる内部欠陥の種類

樹脂・プラスチックのCT検査では、成形時に生じる内部の空隙や流動の痕跡、繊維の状態までを3Dで確認できます。ここでは代表的な内部欠陥を4つに分けて紹介します。

ボイド(空隙・気泡)

ボイドは、成形時の樹脂の収縮やエアポケットの巻き込みによって内部に生じる空隙です。樹脂と空気ではX線の吸収量が大きく異なるため、CTではボイドの位置・サイズ・体積を3Dで定量的に把握できます。

ボイドは肉厚部の中心に発生しやすく、断面積が減ることで強度が低下したり、表面のヒケや外観不良につながったりします。出荷後の破損原因を特定する解析だけでなく、成形条件を詰める段階での確認にも用いられます。

産業用CTによる
ボイド解析の仕組みと活用法
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ウェルドライン

ウェルドラインは、金型内で複数に分かれた樹脂の流れが合流する箇所に生じる線状の欠陥です。合流部では樹脂が完全に融合しきらないことがあり、強度が落ちる要因になります。CTでは合流部が製品内部のどこに、どの範囲で通っているかを3Dで確認できるため、ゲート位置や流路の見直しといった金型設計の改善材料として活用されます。

ヒケ・クラック

ヒケは冷却が不均一な部位で樹脂が収縮し、表面が凹む現象です。クラックは応力が集中した箇所に生じる割れで、表面に現れる前に内部から進行しているケースもあります。CTなら表面の凹みと内部のボイドのつながりや、内部から伸びる微細な割れの向きを、対象物を切断せずに確認できます。

繊維強化プラスチック(CFRP・GFRPなど)の繊維配向・折れ

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)では、繊維がどの方向に並んでいるかが強度を左右します。産業用CTでは繊維そのものの観察に加えて、3次元的な繊維配向解析まで行える場合があり、設計時に想定した配向と実際の成形品との差を評価できます。

成形時の流動によって生じた配向の乱れや繊維の折れ、積層品における層間の剥離なども、非破壊のまま把握できる対象です。強度評価や成形条件のフィードバックに用いられています。

CT検査の活用シーン

樹脂・プラスチック製品に対するCT検査は、開発から量産、トラブル対応までの各段階で使われています。代表的な活用シーンは以下の通りです。

  • 製品開発・試作段階での内部確認
  • 量産品の抜き取りによる品質検査
  • 不良品・市場クレーム品の原因解析
  • 金型・成形条件の改善検証
  • 寸法測定・CADデータとの比較

開発・試作段階では、狙った肉厚や充填状態になっているかを確認し、金型修正の判断材料にします。量産段階では抜き取り検査として内部品質を継続的に確認し、不良発生時には破損の起点となった内部欠陥を特定する解析に使われます。切断せずに同じサンプルを繰り返し観察できるため、条件を変えた成形品を並べて比較する検証にも向いています。

樹脂・プラスチックのCT検査における注意点

樹脂であれば必ず撮影しやすいとは限りません。炭素繊維や無機フィラーを高い割合で充填した高密度グレードは、X線の透過性が下がるため、管電圧や露光時間といった撮影条件の調整が必要になる場合があります。

また、製品の肉厚が増すほどX線が減衰し、コントラストや分解能が落ちる傾向があります。大きなワークは装置内でX線源に近づけられず、高倍率での撮影が難しくなる構造的な制約もあります。対象物の材質・厚み・サイズに合った装置と撮影条件を選ぶことが、狙った欠陥を確実に捉えるための前提となります。

産業用CTの
倍率と幾何学拡大
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SUMMARYまとめ
自社の樹脂製品に合うCT装置はどれか

樹脂・プラスチックのCT検査は、密度の低さを活かして比較的低い管電圧でも内部を鮮明に捉えられる非破壊検査です。ボイドやウェルドライン、クラック、繊維の配向まで3Dで確認でき、開発段階の内部確認から量産品の品質検査、不良解析までを切断なしで進められます。

一方で、高密度グレードや厚肉品では撮影条件の調整が必要になるため、自社のワークに合った装置選びが結果を左右します。当メディアでは、撮影対象物や検査目的に合わせて独自の視点で産業用CTメーカーを調査・ピックアップしています。導入の検討材料として合わせてご確認ください。

撮影対象物から探す
産業用CT3選
アルミなどの軽金属や
プラスチック成形品など
低密度で透過しやすいなら
NAOMi-CTシリーズ
アールエフ
NAOMi-CTシリーズ
画像引用元:アールエフ公式HP
(https://rfsystemlab.com/product/industry/ct/280_380ct.html)
NAOMi-CT
Mサイズのスペック※2
最大管電圧 100kV
撮影サイズ※1 Φ151×H63~82mm
耐荷量 約10kg
本体サイズ 623×310×300mm
おすすめの理由
卓上サイズでその場で撮影可能
低価格で導入しやすいモデル
  • 卓上サイズ・シンプルな設計により308万円(税込/Mサイズ)と導入しやすい価格。工事をせずに研究室や事務所に設置できる。
  • 簡単な操作でその場で撮影・確認が可能。100kVの管電圧によりアルミ・プラスチック製の商品開発や考古学研究に活躍。
マルチマテリアルや
複雑形状部品など
部分ごとに厚みや材質が異なるなら
ZEISS METROTOMシリーズ
カールツァイス
ZEISS METROTOMシリーズ
画像引用元:カールツァイス公式HP
(https://www.zeiss.co.jp/metrology/systems/x-ray/3d-x-ray/metrotom-800-320-kv.html)
ZEISS METROTOM
1500 225kVのスペック
最大管電圧 225kV
撮影サイズ※1 Φ615×H800mm
耐荷量 50kg
本体サイズ 3700×1810×2440mm
おすすめの理由
測定に特化した設計で
精密なCTスキャンができる
  • 測定室・品質管理室での運用を想定。密度が高めの異材質混在部品や精密部品の品質保証に特化。
  • 三次元測定やCADとの連携により、寸法・形状・幾何公差を測定が可能で、不具合の特定や開発期間の短縮につながる。
厚物金属や
溶接構造部品など
高密度で透過しにくいなら
UXシリーズ
コメットテクノロジーズ・ジャパン
UXシリーズ
画像引用元:コメットテクノロジーズ・ジャパン公式HP
(https://yxlon.comet.tech/ja/products-ja/ux50)
UX50のスペック
最大管電圧 450kV
撮影サイズ※1 Φ600×H800mm
耐荷量 100kg
本体サイズ 2250×1770×2350mm
おすすめの理由
高出力・撮影可能範囲が広く
大型・高密度のワーク撮影に強い
  • 工場内や検査エリアで扱われる大型・高密度な鋳物部品や厚肉構造物に対し、高電圧による高い透過力で内部撮影が可能。
  • 広い視野で大型のワークでも全体を一度に把握することができ、欠陥の位置関係の把握や厚肉・高密度部の状態確認に対応。

電話番号は公式サイトに記載がありません

※1:撮影サイズについては、NAOMi-CT・UX50は「最大スキャンサイズ」、ZEISS METROTOMは「精度保証条件下での測定範囲」を掲載しています。
※数値はいずれも撮影・測定条件により変動しますので、詳しくは各社にお問い合わせください。
※2:NAOMi-CTは、Mサイズ、Lサイズ、スライドLの3種類があります。